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アメリカでの起業は難しくない!
エンジェルやVCは起業家の資質を最も重要視する
今回のポイント
- 自分自身を客観視できる起業家をVCは支援する
- 技術力よりも市場の成長性が問われることを認識しよう
- 確実に売れる仕組みを事業計画段階から構想する
半導体の研究をするため日本の大学院修士課程を終え、さらにアメリカの大学院博士課程に留学した二八歳の西田憲一さん(仮名)は、博士論文に取り組んでいる最中、半導体生産の新技術を開発した。それが実現すると、今までの半分以下のコストとスピードで、より高性能な半導体を作り上げることができるというものだ。
早速、特許を申請し、商業化を目指して、半導体製造装置の試作品を作ろうとしたが、試作品だけで巨額の資金が必要になる。いっそのこと技術を大手企業に売ろうかとも考えた。
だが、ダイナミックなアメリカのべンチャー・エコノミーを目の当たりにして、「経営者になれるかどうか自分を試してみたい」、「べンチャー立国・アメリカで起業する醍醐味を自ら体験したい」と元来の起業家への願望が目覚め、その技術にすべてを賭けて自らの手で事業化することを決意する。
理想は高かったが、親からの仕送りと奨学金で貧乏学生生活を続けてきたことから、先立つ資金がまったくなく、調達先のあてもない。
とにかく「アメリカ式べンチャー起業法を試そう」と、博士論文の準備はそっちのけで、早朝から、深夜まで毎日事業計画書作成に明け暮れること二ヵ月。そしてでき上がった事業計画書を持って、大学院の友人や知人を回った。
知人の紹介で私が西田さんに会ったのは出張先のサンフランシスコだった。西田さんは、技術者には珍しく、自らが開発した技術に対して客観的な評価をしていることが分かった。また事業を成功させるためには、技術カ以上に市場性や販売カが大事であることもわきまえている。謙虚で努力家、そしてリーダーシップを自然に発揮できるタイプであり、経営者に向いているとの印象を強くした。
そこで、なんとか力になれればと、元半導体関連会社社長でエンジェルであるF氏を紹介した。ところが、F氏に事業計画書を見せたところ、厳しく指摘される。「技術は有望そうだが、市場分析は甘いし、マーケティング・販売面を軽視している。根本的問題は、急成長しながら儲かるというストーリー(構想)になっていないため投資家への説得力がない!」と。
それから事業計画書を作り直し、F氏のところに持っていくこと十数回。そのプロセスを通して、F氏も西田さんがべンチャー経営者として必要な能カ、特にハードワークに耐えるカ、軌道修正する柔軟性、カリスマ性を持っているのが分かったという。
努カ家で進歩が早い西田さんに信頼を寄せ始めたF氏は、友人のべンチャーキャピタリスト三人(三社)に西田さんの会社立ち上げの総合的な支援(事業計画完成、出資、人材確保等)を要請してくれた。三人がその要請を受け入れ、西田さんは会社設立と同時に約2000万ドル(20億円強)の資金供給の約束を、彼らから取り付けることができた。
創業当初から十分な資金と優秀な人材を確保でき、順調な出発をした西田さんは今、試作品の完成に余念がない。
事業に全力を投入するため、博士課程は中退することになったものの、博士課程の指導教授までが、今ではもう一人のエンジェルとして、西田さんの会社へ出資し、社外取締役として技術指導も行ってくれている。
エンジェルやべンチャーキャピタルがべンチャーを支援するかどうかを決める際には、以下の三点を見る。
まずいちばん大事な点は、経営者(2人以上の場合は経営陣)の総合的な資質だ。即ち経営者(陣)の経験・実績、人格、専門能力・知識、人脈、統率カ、誠実さ、バランス感覚、体カ、精神カ、素直さ、客観的評価・分析能カ、迅速さ等、べンチャー経営に必要なものを持ち合わせているかどうかを見る。
二点めは、事業の市場性(販売可能な量)だ。特に有望なのは、将来市場が急成長するか、参入予定の事業が成り立つ十分な市場がすでに存在し、継続して存在し続けることだ。どんなに優れた技術や製品を開発しても、その市場がなければ、リターンどころか、投資回収ができない。エンジェルやべンチャーキャピタルは、そんな事業への支援はまずしない。
三点めに、新技術、製品、システム、サービスが実際に売れるものであるかどうか。技術者出身の起業家の多くが陥りやすい大きなミスは、自らが発明・開発したものが、市場や顧客に受け入れられると信じ込み、売れるかどうかの検証やテストを怠ることだ。
注意すべきは、市場が存在することと自社の製品やサービスが競争に勝って売れることはまったく別ということだ。確実に売れるであろう仕組みを事業計画書作成段階で構想できるかどうかは、エンジェルやべンチャーキャピタルから支援を得る際の岐路となる。
西田さんのように技術には自信があっても事業計画が未熟な場合、エンジェルやべンチャーキャピタルからアドバイスを受けながら事業計画書を作ると、投資家にとって魅力的なものになることが多い。
次回は、M&A (企業の買収・合弁)や戦略的提携で、事業を躍進させる方法を、実例を通して探りたい。
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