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アメリカでの起業は難しくない!
数字で将来性を説明できれば資金調達で困ることはない
今回のポイント
- 月次決算で計画と実績の差を分析し、早めに軌道修正する
- いつ、どれだけの資金が必要か把握し、早めに準備する
- 有能なCFOを確保し、内部管理体制を早期に確立する
丸井芳太郎さん(仮名)は、広告代理業を米国で起こした。米国の大学を卒業し、六年間日系広告代理店で経験を積んでのことだ。
起業と同時に、親、親戚、知人、友人など11人から、目標としていた初期資金、合計約50万ドルを集めた。ほとんどの人は電話一本で了承してくれ、たった二週間で資金が集まったという。資金集めで相当苦戦すると思っていた丸井さんは、ひとまず安心した。
しかし、それが落とし穴だった。問題は、必要な資金は簡単に集まると錯覚したことだった。せっかく集めた50万ドルも、高い事務所賃料と不必要な人件費に費やし、創業から六ヶ月でなくなってしまった。
丸井さんが私に相談に来た時は、資金も底をつき、一ヶ月以内に追加資金が集まらないと、会社が倒産するという状況だった。とにかく時間がなかったため、私はまず丸山さんに今後資金を大事に使うことを約束してもらい、米国のエンジェルを中心にとりあえず約100万ドルを集めた。
次に資金管理と追加資金集めのために、私の友人で日米の会計、財務、税務に詳しい米国人、エドワード・マーチンさん(仮名)を米国の大手会計事務所から引き抜き、CEO(最高経営責任者)兼CFO(最高財務責任者)に就任してもらった。彼は特にナスダック(米店頭株式市場)への上場支援が専門で、多くのベンチャー企業の資金調達や経営の立て直しを外部コンサルタントとして手掛けてきた。その経験から、地域の多くのエンジェルやベンチャーキャピタリスト(VC)とかなり親しい関係にある。
そんな彼が丸井さんの会社に入って最初に手掛けたのは、キャッシュフロー計算書と月次決算書の作成だった。理由は以下の三点を明確にするためだ。(1)会社の財政がどのようにして悪化していったか、(2)どれだけ会社は無駄な資金の使い方をしてきたか、(3)実際にどのくらいの資金がどのタイミングで必要なのか。
結果として、まず徹底的な経費削減を行い、会社に対して貢献度の低い社員を解雇し、高い成功報酬(コミッション)により営業部隊の業績向上を図るなどの対策を次々に手掛けていった。月次決算ベースでだんだん会社の売り上げが伸びる一方、赤字も減っていき、八ヵ月後ついに単月ベースで黒字転換した。その決算書ができるなり、マーチンさんは、友人のエンジェルやVCを訪問し、将来の事業計画を説明した。大型の資金調達が目的だった。
将来性があることを実績(数字)で説明できたマーチンさんは、今後必要になるであろう資金、合計1200万ドルをエンジェルやVCから集めることに成功した。これまでも彼は、同様の方法で何度も大型資金調達に成功している。
今回のテーマ「資金調達で困らないための方法」というと、特別な方法があるように思われるかも知れない。が、実際は非常に単純なことをするだけだ。すでに紹介したケースのように、まずどれだけの資金がいるのかを正確に把握し、その資金を集められるだけの説得材料(ストーリーや実績)をどう作るかだ。
米国で会社を経営する以上資金で困らないということはまずない。ただ、資金集めで困らないようにする方法はある。その代表的な四つのポイントを次に紹介したい。
(1)できるだけ緻密な財務計画を立て、計画と実績の数字の比較・分析をする。大事なことは月次決算をし、計画どおり進んでいるかを厳しくチェックすること。差があればその理由を徹底的に解明し、軌道修正のために、具体的な手を速やかに打つことだ。
(2)三年から五年分のキャッシュフロー計算書を作成し、資金がどのタイミングで必要になるかを正確に把握し、できるだけ事前に調達の準備をする。
(3)内部の会計・財務管理体制を早く確立し、正確な会計情報が毎月タイムリーに把握できるようにする。
(4)創業後、できるだけ早い段階での黒字転換を実現させる。赤字でも赤字幅が徐々に減ってきていることを月次決算など正確な会計情報によって証明できるようにする。
この四点が守られていれば、米国での資金調達は難しくない。必要な時に必要な資金を集められるようになる。投資家は会社の将来性を見ることができ、投資判断も下しやすくなるからだ。逆にいえば、これら四点が実行されていなければ、どんなにすばらしい技術、製品、システム、サービスを持っていても、事業が成り立つかどうか判断しにくいため、投資もしにくくなる。
これら四点を実践するために必要なのは、有能なCFOをできるだけ早く確保することだろう。CFOは従来型の日本企業の経理部長や財務部長とは違う。CFOは会社に必要な資金確保のために積極的に財務戦略を仕掛けていかなければならない。
丸井さんのケースのように、創業間もない時期の場合、往々にしてCEOがCFOを兼任しなければならないこともある。CFOの役割を果たせる人が社内にいない場合は、専門家にアウトソーシングしてでも、補っていかなければならない。
米国では、臨時にCFOを引き受ける外部コンサルタントも多い。早期の上場が可能になりつつある日本でも、いずれは臨時にCFO機能を請け負うコンサルタントが増えていくだろう。
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