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アメリカでの起業は難しくない!
失敗の経験を生かして起業を成功させる方法
今回のポイント
- どうしたら同じ失敗をしないですむのか、徹底的に考える
- 失敗を教訓にして、プロの経営者には何が求められるかを学ぶ
- 失敗にめげることなく、戦略を立て直して挑戦を続ける
柴田誠一さん(仮名)は、高校を卒業した直後に渡米した。目的はアメリカの大学に入学することだったが、三ヶ月間の英語学校での勉強もむなしく、入学に必要な英語試験(TOEFL)の得点(500点以上)をクリアできなかった。その後、猛勉強して、六回目にしてようやく試験をパスし、正規留学生としてカリフォルニア州の大学への入学が許可された。
ここからまた英語との格闘が始まる。苦手な英語での勉強はもともと体育会系の柴田さんにとっては拷問にも等しい。単位もなかなか取れなかったため、予定より二年も余計にかかり、入学から六年後にやっと卒業できた。
「両親からの全面的な経済的支援がなければ(つまり学費や生活費稼ぎのためにアルバイトをしていたなら)、卒業は無理だっただろう」と柴田さんは述懐する。
卒業後も就職先はなかなか決まらない。アメリカ中のほとんどの日系企業に採用願いの手紙を送ったそうだ。そんなとき、柴田さんはわらをもつかむ思いで私に電話をかけてきたらしい。
私の場合、自らのアメリカで起業体験を振り返ると、会計事務所でプロとして生きるアメリカ人のなかでもまれたことが非常に役立った。また、全米での人的ネットワーク作りが短期間でできた。その経験をふまえて、柴田さんには、あえて日系企業ではなく、アメリカの大手会計事務所を就職先として勧めた。
日本の大学を出たばかりで、英語力も専門能力もほとんどなく、お世辞にも優秀な学生とはいえなかった私であったにもかかわらず、アメリカの会計事務所は採用してくれた。ずいぶんヘマや失敗も繰り返したが、なんとか仕事をこなせたことはその後私が起業した際の自信につながっている。
それというのも、(1)なぜ失敗したのか、(2)どうしたら次から同じような失敗をしないですむのか、(3)この失敗によって何が学べるか、を失敗するごとに徹底的に追求・分析し、教訓としていったからだ。
私のアドバイスを聞くなり、柴田さんは積極的にアメリカの会計事務所十数社にアプローチし、何のコネもなかったにもかかわらず、大手会計事務所のニューヨーク本部にプロフェッショナルスタッフとして採用された。監査部門勤務になった柴田さんは、起業に必要な会計・財務管理・税務を徹底的に学ことができたという。
柴田さんは、会社からCPA(米国公認会計士)の資格所得を命じられ、五度めの受験で合格。勤勉さが認められ、会社を通じて永住権を取得することもできた。外国人がアメリカで起業するのに必要とされている五つの最低条件、永住権(日本にいながらアメリカの会社を経営する場合は別)、ビジネス・財務管理の知識、英語力、人脈、ビジネスパートナーを得たと確信した段階で柴田さんは、起業を決意する。
経費の使いすぎで失敗
早速会計事務所を退職し、とりあえず日本のハイテク製品をアメリカで売るために、会計事務所勤務時の後輩であるアメリカ人、トム・ベネットさん(仮名)をパートナーとして迎え入れ、貿易会社を立ち上げた。
創業資金は柴田さんがコツコツ貯めた五万ドルに両親からの借金十万ドル、そしてベネットさんから出してもらった二万ドルの合計十七万ドルになった。そして、見えを張りダウンタウンにある一等地のオフィスビルに五十坪の事務所を借りてしまった。柴田さん、ベネットさん、秘書の三人しかいないのにもかかわらずだ。また、オフィス機器や家具も高級品をそろえた。
会計事務所同様、立地条件のいいところに事務所を借りれば、それなりに成果が出ると思っていた柴田さんは、一年たってもほとんど商談が成立しないことにショックを受けた。資金が足りなくなり、エンジェルやベンチャーキャピタルなどに出資を頼んだ。
当初は、ビジネスモデルがいい、将来性がありそうだ、と話は進むが、月次損益計算書やキャッシュフローなどの資料を見るやいなや、「収入もないのに経費を使いすぎる」「経営者として経済観念がなさすぎる」などと厳しく指摘され、投資話は頓挫してしまう。
そんななか、ベネットさんは将来の高給と社長の座を約束されたにもかかわらず、柴田さんの経営者としての資質、会社の将来に疑問を感じ、会社を去った。柴田さんは秘書を解雇し、事務所も自宅に移し、再度ゼロからのスタートを切った。大反省した柴田さんは、アメリカで起業するうえで次の五つのことを学んだという。
(1)アメリカのベンチャーもまず売り上げ・利益ありきである。
(2)アメリカのプロの投資家は経営者の経費の使い方をしっかり見る。
(3)経営者は夢やビジョンを語る以上に、数字で結果を出さなければ、人はついてこない。
(4)アメリカでは実質(ビジネス上の成果)があれば、見えや体裁を気にする必要はない。
(5)会計・税務のわからない人はアメリカでは経営者とみなされない。
柴田さんはこの失敗の経験を生かし貿易事業を大きく伸ばした。今では年商十億円近くになるが、社員2名で事務所は今も自宅に置いている。感心なことに、先に紹介した五つのポイントを「経営の五か条」として毎日読み上げることを日課としている。
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