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アメリカでの起業は難しくない!
米国の有力企業との戦略的提携を実現する方法
今回のポイント
- どの企業とどんな内容の提携をしたいのか、よく考える
- 提携希望先のトップに近い人に紹介者になってもらう
- 両社にとってプラスの状況になるシナリオを描く
田村伸介さん(仮名)は、日本で半導体製造に関する画期的な新技術を開発し、米国で起業したがすぐに行き詰まった。半導体製造装置を製品化できるまで、早くても一年以上かかるうえ、七百万ドル近くの追加投資が必要だったからだ。
事の始まりは、田村さんが勤めていた日本の大手メーカーH社が、半導体事業を縮小し、製造技術の開発を外注化したことだった。つまり、H社において田村さんたち半導体技術者の居場所がなくなったのだ。
退職金と知人・友人から集めた資金を元手に、田村さんたち三人の技術者が10ヶ月間必死の努力を重ねて、ようやく実った研究成果だったが、完成度が中途半端だったことは否めない。米国で起業したのは、特に技術支援と資金調達での期待があったからだ。
田村さんは、米国の大学院で工学博士を取得後、H社中央研究所に入社し、独立するまで八年間、半導体製造技術一筋できた。
基本技術の開発と日米での特許申請に全資金を費やしたため、追加の七百万ドルは、外部から集めるしかない。技術と資金の両面で支援してくれるパートナー企業が見つかれば理想的だ。
田村さんは、悩んだ末、米国の大学院博士課程時代の指導教授ロバート・ハヒントン博士(仮名)に相談した。教授は、教え子であり米国大手半導体メーカーI社で技術担当副社長をしているティム・トンプソンさん(仮名)を紹介してくれた。教授の思惑どおり、I社は田村さんの会社に一千万ドルまでの資金援助、共同研究・開発、製品完成後の大量生産・販売支援を約束し、業務ならびに資本提携という形で契約を結んだ。現時点では、あと数ヶ月で製品の完成が見込めるという。
このI社との提携は、田村さんたちだけの力では、まず無理だっただろう。ハヒントン教授の推薦があり、トンプソン副社長が社内を説得したからこそ実現したと思われる。有望な技術や製品を米国の有力企業に持ち込んだ際、米国でも窓口になった人のやる気と紹介者の力で結果は大きく違ってくる。もちろん田村さん自身が学生時代から教授や友人から高い評価を得ていたことも成功の要因の一つだ。
米国でも起業する場合、早い段階で有力企業と戦略的提携ができれば、成功率を高めることができる。異国で起業する日本人にとって、現地で強力な味方を得ることは特に重要だ。
相手は何を求めているか?
1970〜80年代に日本の大企業が次々に米国に進出したが、米国企業との戦略的提携の重要性が分からなかったために、ほとんど単独で展開しようとした。その結果、後に訴訟のターゲットになったり、米国政府(連邦、州、郡、市など)から好意的な対応をされなかったり、市民や慈善事業団体から反対運動が起きたりと大変な目に遭い、損もした。ベンチャー企業の場合は、そのような問題が起きれば、資金的余裕がないため死活問題となる。
そこで、日本人起業家が米国有力企業と戦略的に提携するための三つの要点を紹介しておく。
(1)まず、どこ(提携先企業)とどういったこと(提携内容)で、いつ(提携のタイミング)、どこ(提携地域)で提携したいのかを徹底的に社内で調べ検討する。この段階で業界や提携先候補企業に精通している社外のプロ(たとえば弁護士、会計士、コンサルタント、大学教授、研究者)にも入ってもらい、客観的かつ専門的なアドバイスをもらうようにする。
提携希望先のことをよく知らずに提携を前提としたコンタクトをし始めると、時間を失うのみならず、相手を怒らせ敵にしてしまう可能性が高いのでくれぐれも気をつけたい。
田村さんのケースでは、彼の恩師が業界を熟知していたので、アドバイザーとして最適な企業を適切なルートで紹介してくれた。
(2)できれば、提携希望先リストをつくり、提携希望先順位を明確にする。その順位に従ってコンタクトし、できればその企業のトップ、あるいは戦略、提携、技術、財務などの担当者と面談して意見交換する。その際はありとあらゆる人脈を使って、提携希望先のトップに近い人(社内外両方)に紹介者としてはいってもらい、調整役をお願いする。これを実行するのとしないのとでは、成功率がかなり違ってくるというのが、私の過去の経験からくる一つの結論だ。
田村さんのケースでは、ハヒントン教授が紹介者となり、彼の教え子で提携先企業の副社長でもあるトンプソンさんが社内での提携推進役となった。
(3)最後に、提携する両社にとってプラス、つまりウィン・ウィン(Win-Win)の状況になるシナリオを描けるかどうかだ。理想的な提携先でも、相手にメリットがなければ、相手にはあえてリスクをとってベンチャー企業を支援する理由はない。メリットがあると判断されるかどうかは、事前の下調べとプレゼン能力にかかっている。
また、提携先候補企業が何を求めているのかを、よく理解したうえで提案をする。田村さんの場合は、I社が開発しようとしている技術について事前に知らされたため、I社に具体的な提案ができたという。やはり、事前に相手先企業をどれだけ把握できるかが、提携でも大事なポイントになることをこのケースは物語っている。
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