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21世紀の会社組織<3>
超スピード化時代の組織
トップが率先して現場と直接対話せよ
今回のポイント
- 超スピード化社会では現場直接の組織が必要とされる。
- ピラミッド組織では意思決定・実行が遅れがちになる。
- 経営トップが積極的に現場とコミュニケーションを。
私は現代の企業経営で「スピード経営を実行できる社長・トップマネジメント」ほど大切なものはないと思っている。もちろん、ただ早く意思決定や実行に移すことだけではダメだ。普段からスピード経営の大切さを説き、自ら実践しながら、株主・社外取締役、顧客、社員、取引先など関係者に理解・支援してもらうようにしなければならない。
少し前までは企業経営において、ヒト、モノ、カネ、情報がもっとも大事な要素とされ、その中でも「企業はヒトなり」で象徴されてきたように、ヒトがすべてを決める。人間の組織である以上、ヒトが大事であることは普通だと思うが、さらに具体的に絞り込んで言及すると、すでに述べている「スピード経営を実行できる社長・トップマネジメント」だと痛感する。それさえあれば、モノ、カネ、情報は自然についてくる。
スピード経営の組織
私は縁があって20年近く日米間で、企業の組織を観察する事を1つの仕事としてきた。その経験から、日米間両国の優良企業に存在する一つの普遍的な特徴を学んだ。
それは、「スピード経営を実行できる社長・トップマネジメント」の作る組織が、自然と同様なものになることだ。具体的イメージとしては、「スピード経営におけるダイレクト・コミュニケーション」というタイトルをつけた図のようになる。
その図を見ていただくと明らかだが、社長・社内取締役(会社によっては執行役員)がコミュニケーションの中心におり、彼らから社外取締役・株主、顧客、社員(上・中管理職を含む)、取引先へはダイレクトにコミュニケーションができることになっている。
これはスピード経営を行う社長・トップマネジメントにとって当たり前のことだ。が、実際に現在日本の大企業や中堅企業で、社長・社内取締役が社外取締役・株主、顧客、社員、取引先に直接コミュニケーションを図っているところは極めて少ない。
50年以上の歴史を誇る自動車部品メーカーのC社は、バブル経済のあおりを受けて、1980年代半ばから90年代初頭まで業界でもトップクラスに踊り出るほど急成長した。作れば作るほど売れる状況(バブル経済)の下では、同じようなことを繰り返してさえいれば、経営は安泰のようだった。まさか、急激に経済が悪化し、C社の社長・トップマネジメントの誰もが予想できなかった。
バブル経済時は、今同様、ピラミッド型組織でトップマネジメントから末端の社員までかなり厚い層ができてはいたが、ビジネス環境が今ほど急激に変わるようなことがなかったために、意思決定や実行速度が多少遅くても、そこそこの結果は出ていた。しかし、93年前半から急速に業績は悪化し、それから毎年減収減益を繰り返している。このまま行くと存続も危ぶまれる状況にまで追い詰められている。
C社の社長・トップマネジメントは、リストラをはじめさまざまな手を打つが、一向に業績の回復が見られないことから、いまだに苦悩のどん底にいる。C社の場合、かなりドラスチックな変化を経験したが、この種の問題は、現在日本企業のほとんどが抱えている構造的・本質的なものだと私は診る。
つまり、超スピード化しているビジネス環境下において、ほとんどの日本企業はいまだにピラミッド型組織を維持しているため、稟議制度、コンセンサスによる意思決定、決済・決議事項に関する事前の長時間にわたる根回しなどで、意思決定・実行のタイミングをかなり遅らせている。
現場本位の意思決定を
ある大手日本企業の依頼で、米国での提携先・投資先の発掘・紹介をしたことがある。2年間で250社ほど紹介させていただいたが、結局トップマネジメントによる意思決定の遅さから、米国の競合他社や日本のベンチャー企業にビジネスチャンスをことごとく横取りされ、成功した提携・投資が少なかったのを思い出す。
昔のように意思決定に必要な情報を100%近く集められるまで決断を待つことは、超スピード化社会の現代において、もう意思決定としてほとんど無意味になってきている。せいぜい60%くらい集められれば十分で、それ以上情報が集まるまで待てば、大抵の場合ビジネスチャンスは逃してしまう。したがって、60%近い情報が集まった時点で、速やかに意思決定し実行する癖をつけることは、スピード経営における成功の必要条件ともいえる。
社長・トップマネジメントがその60%の情報をどれだけ早く集められるかが成功のポイントとなってくる。また、普段から社外取締役・株主、顧客、社員、取引先とどれだけダイレクトでオープンなコミュニケーションができているかで、その60%の情報の利用価値が大きく変わってくる。すなわち、トップはコンスタントなダイレクト・コミュニケーションによって、現場とのギャップをできるだけなくし、現場本位の意思決定をしなければ、超スピード化社会では、正しい経営判断はできないということだ。例として出したC社には、まさにこれが欠けているのだ。
ちなみに、現場とは、社員のみならず、株主、顧客、取引先が会社に関する活動を行っている第一線の場を指す。またそこにはいちばん生で最新情報が集まる所でもある。
難しいことを言っているようだが、実は非常に単純なことだ。つまり、「トップ自らできるだけ現場に入り、株主、顧客、社員、取引先と直接対話し、意見も聞いて、それを基にスピーディーに意思決定・実行していきましょう」ということだ。今までのように、ピラミッド型組織のトップにいて、自分では動かないで下から上がってくる情報だけで大事な経営判断をしない、ということもある。
社長が今実践すべきこと
最後にスピード経営に必要な社長・トップマネジメントによるダイレクト・コミュニケーションの中で、これだけは社長・社内取締役に実践していただきたいということを次に紹介する。
(1)社外取締役を全般取締役数の半数以上にし、彼らと共に株主と定期的(できれば四半期に一回)に会い意見・情報交換をする。
(2)顧客に対して満足度に関するアンケートを定期的(できれば四半期に一回)に行い、その結果が出るごとに顧客と会い、フィードバックしてもらったうえで、具体的な改善策を話し合う。
(3)定期的(できれば四半期に一回)に社員との意見・情報交換会を持ち、問題点を探る。
(4)取引先に対して現状における問題点に関するアンケートを定期的(できれば四半期に一回)に行い、その結果が出るごとに取引先と会い、フィードバックしてもらったうえで、具体的な改善策を話し合う。
(5) Eメール、意見箱、手紙などあらゆる手段で、社外取締役・株主、顧客、社員、取引先からアイデアや意見を出してもらえるよう定期的にお願いする。
これらから理解いただけると思うが、ポイントは社長・社内取締役から社外取締役・株主、顧客、社員、取引先への積極的でコンスタントかつダイレクトなコミュニケーションだ。これ以外にトップと現場のギャップを埋める最良の方法はないというのが、私の結論だ。
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