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実践講座 アメリカで会社を起こす!
アメリカ式経営・販売戦略

アメリカで、ベンチャー経営を成功させるためのキーワードは、 「実績(実力)主義人事管理」、「(アメリカ式)販売戦略」、「株主利益最優先」の三つだ。これらが日本人起業家にとって何を意味するかを、今回は掘り下げてみたい。

■実力主義を徹底する

まず、「実績(実力)主義人事管理」の意味は、二つある。一つは、本人の実力や業績を厳しく公平にチェック及び評価して、報酬、役職、その他の待遇(社宅、社用車等)を決めること。これをベンチャー・マネジメント・バイオブジェクティブ(VMBO)と私は呼んでいる。もう一つは、会社と本人が所属する部署の業績に応じて、報酬等を決めること。個人プレーだけの評価ではなく、総合的に会社と部署にどの程度貢献したかも見る必要がある。ちょうど、プロ野球やプロフットボールの世界のようにだ。

日本人起業家には、この徹底した実力主義、経営者としてのプロ意識が欠けている。「事勿れ主義の凡人サラリーマン」に社長が務まるほど、ベンチャー経営は甘くない。実力の無い社長には、投資家、社員、取引・提携先はついてこない。この場合、実力とは、主に知識、経験、人脈、統率力、指導力、資金力(資金調達能力)、判断力、適応性、柔軟性、人格、実行力、コミュニケーション能力、体力、精神力、説得力、セールスマンシップ、創造力を意味する。

自分に経営者としての能力が欠ける場合、外部から有能な人を連れてきて社長職を任せ、オーナー会長なり副社長なりに収まるか、自分に足りないものを持つパートナーを探し、共同で起業することが成功のカギとなる。

また、アメリカのベンチャー企業の場合、成功に応じて、経営者に最も要求される能力が変わっていく。そのため創業期、急成長期、安定成長期、成熟期の各段階に最適な社長、CEO(最高経営責任者)を確保することが、ベンチャー・キャピタルやエンジェル等の投資家にとっては、必須の権利となる。コンパック、コンプUSA、アップル等に見るように、投資家によるCEOの解任劇は、アメリカでは日常茶飯事だ。「社長になること、また社長でありつづけることにこだわるな! 一人で全てをやろうとせず、プロの経営チームを作ろう!」と言いたい。

ゲームソフト制作事業を始めるため渡米した、二十六歳のAさんは、アメリカの投資家(ベンチャー・キャピタル)から合計275万ドルの出資を受け、順調に起業した。日本の有名大学理工学部二年生のときから、アメリカで会社を起こすことを決め、英語や経営に関する猛勉強もしてきた。非常に優秀で、製品開発に関しては何でも自分でやってのける能力と根性がある一方、基本的には技術者肌なので、細かいところに気を取られて全体が見えなくなるタイプだった。また、無口で対人関係は苦手な上、頑固で融通が利かないため、経営者には向かない。

投資家から要請を受けた私は、「社長職を外部からヘッドハントしてくる経営のプロに譲り、技術担当副社長として製品開発に専念したほうがいい」とAさんに打診した。ところがAさんは、震えながら反論してきた。「社長職を辞めるくらいなら、会社をつぶしたほうがましです!」

結局、Aさんはその半年後、投資家が六割を占める取締役会で予告もなく社長を解任された。その上大株主であるベンチャー・キャピタルから、最高経営責任者として損失補填の訴訟まで起こされた。アメリカ式ベンチャー経営を理解していなかった日本人起業家の悲劇の例だ。

業績主義は、経営陣・管理職全員が対象となる。実力のある人を獲得・確保するためには、業績主義は徹底させなければならない。社長より高給取の社員がいてもおかしくない制度が、アメリカ式人事管理システムの醍醐味だ。

■販売戦略を重視して有能な人材を確保する

二つ目のキーワードは、「(アメリカ式)販売戦略」だ。日本人は最新の技術、製品、サービスを開発しさえすれば売れると錯覚し、販売を軽視しがちだ。開発に全てを費やし、いざ売る段階になって、ヒト、モノ、カネがなく、泣く泣く会社を閉めている例も多い。

また売れるはずのものでも、アメリカでは特に販売担当者の能力によって、販売量が大きく変わる。従って、高給を払ってでも有能な販売担当責任者を確保することが、必要不可欠だ。報酬をけちって、二流三流の人材を雇うと、成果が出ないだけでなく、接待費・出張費等でおカネが出ていくばかりとなる。

アメリカ人は、ハッタリをよく言うので、販売担当者を採用する際は、過去の実績と複数の人の評価を判断基準にしたほうがいい。また、雇った際は、年間目標を具体的な数値で設定させ、年度末に達成度をチェックする。それを基準に報酬・待遇等を決め、結果が悪ければ、容赦なく解雇する。ベンチャー企業は、自らが生き残るために、心を鬼にして勇断する必要がある。

実家が印刷業を営んでいたBさんは、父親の勧めと資金的援助もあって、アメリカの大学を卒業した後すぐに印刷会社を起こした。Bさんは、業界知識・経験・人脈が無かったため、創業十五年、従業員三十人程の会社を買収し、引き続き被買収会社のアメリカ人社長に新会社の社長職を任せ、Bさんはオーナー会長兼CEOとして、しばらく会社経営を勉強することになった。アメリカ人社長は営業畑出身だったが、六十歳代後半で、気力、知力、体力も限界となり、それに伴って売り上げが激減、財務的に苦しくなり、会社を売りに出したのだった。

Bさんは、自称「営業のプロ」という四十二歳のアメリカ人を、営業担当副社長として雇ったが、一年以上経っても社長も副社長もまったく成果が出せない。資金的にぎりぎりになって相談に来られたBさんに、私は、即刻両者とも解雇し、実績とやる気があり、営業に強い社長を、高給でヘッドハントするようアドバイスした。その後、大手印刷会社の営業担当副社長を迎えることに成功したBさんは、新社長の提案により、全営業スタッフに目標管理制度を導入し、二年間で売り上げを五倍にすることができた。

■投資家の意見を尊重し株主利益を再優先する

最後のキーワードは、「株主利益最優先」だ。ベンチャー企業の場合、少数の投資家がかなりの投資リスクを負う。そのため投資家は、会社が株主の利益を再優先した経営を行っているかどうか、絶えずチェックをする。もし、そうでない場合、容赦なくCEOや責任者を解任する。日本人起業家が、アメリカで投資家を募り、会社を起こすケースが最近増えてきたが、この点を侮って彼らから見放されることがないようにしたいものだ。心がけるべきは、絶えず投資家とのコミュニケーションを図り、彼らに提出した事業計画とズレが生じる場合は特に早期に相談し、アドバイスや意見を聞くようにしよう。

次回は、アメリカで事業に失敗したときの効果的な撤退法について話してみたい。

     
  
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