実践講座 アメリカで会社を起こす!
アメリカ法人の種類と作り方
■長期的戦略に基づいて最適な事業形態を選ぶ
日本人や日本企業がアメリカでビジネスをする場合、大きく分けて次の五つの事業形態が用いられる。個人経営、駐在員事務所、外国・州外の法人の支店、パートナーシップ(共同経営)、株式会社(現地法人)だ。
それぞれ税務、法律、経営上のメリット、デメリットがあるので、事業を行う州(現地)の法規、事情に詳しい会計士、弁護士、コンサルタントなどによく相談し、長期的目的を考慮したうえで、戦略的形態を選ぶことをお勧めする。
まず個人経営は、事業収入や支出は個人のものと見なされ、個人の所得税申告書で精算される。個人経営では経営者が法律上無限責任者となるので、リスクの高い事業の場合は株式会社やリミテッド・パートナーシップのような別法人で有限責任となる形態にしたほうがいい。
将来どのように事業展開をするか、まだ決められない場合、現地での情報収集に便利で有効な形態が駐在員事務所だ。州政府への申請は不要で、事務所の活動が準備・補助的な範囲に限られていれば(つまり、営業活動をしていなければ)、法人税の対象にならないメリットがある。しかし逆にいうと、営業活動ができない点がデメリットでもある。また、すべての税金が免除になるのではなく、給与関係税や固定資産税、州によっては(例えばニューヨーク州やカリフォルニア州)フランチャイズ税に関する報告・支払い義務があるので要注意だ。
日本で寿司屋を30年近く経営するAさんは、息子に英語とレストラン・ビジネス事情を学ばさせるため、駐在員として5年間アメリカに派遣した。息子はアメリカ人エンジェルから出資を受け、日本料理のチェーン店を始め、現在までに開いた4店舗すべて繁盛させている。
外国(日本を含めた州外)の会社が、アメリカのどこかの州で支店を設置して事業を行うためには、その州の州務長官より事業の許可を得なければならない。許可なしで営業活動を行った場合は、罰金を支払う義務が生じる。事業許可を得るためには、事業許可申請書、会社の存在を証明する書類、反トラスト宣誓書の三つの書類を州務長官に提出しなければならない。
アメリカで新たに現地法人(株式会社)を設立するのと比べ、支店には次のようなメリットとデメリットがある。
まずメリットは、創業時や事業が軌道に乗るまでの損失を日本の本店の利益で相殺できる。本店の経費をある程度支店に負担させることができる。米国支店からの日本の本店への利益配分は源泉徴収の対象から外されるなどだ。
一方デメリットとしては、米国支店の債務や責任が日本の本店まで及ぶ。アメリカの裁判・税法の管轄が支店を通じて日本の本店にまで及び、本店の人事管理制度や会計。税務処理も調査の対象となる。法律上、契約責任者は日本の本店となるので、本店と現地支店とのやりとりが多く、時間と手間がかかる。重要な決裁を現地事情に疎い本店が行うことが多いので、事業の現地化が難しいなどの点が挙げられる。
ゲームソフトを日本で製造・販売していたB社はアメリカに支店をつくり、英語版を売り始めた。日本で儲かっていたころはアメリカでは赤字で、アメリカで利益が出始めたら、今度は日本側が赤字に転落した。ただ同社はアメリカに支店をつくったため、税務上の効果を最大限に生かすことができた顕著な例となった。
次にパートナーシップには、ゼネラルとリミテッドの二種類がある。ゼネラル・パートナーシップは、利益追求のための共同事業体で、パートナーシップが法人として負う債務について無限責任を持つ。一方、リミテッド・パートナーシップの責任は有限で、拠出資本の範囲に限定されている。リミテッドでは、最低一人のゼネラル・パートナーが必要とされる。
パートナーシップは株式会社と違い、パートナー間の契約によりつくられる。従って税務申告書は作成されるが、実際の税金は合意した割合に基づいて各パートナーが負担する。すなわち各パートナーは個人の税務申告書にパートナーシップで生じた利益または損失の割合分を、他の収入、支出とともに精算して自己申告する。パートナーシップの損失を個人の利益と相殺できる税務上のメリットがあるわけだ。
ただパートナーシップは、各パートナーが事業に対し、ほぼ同等に貢献できて機能する形態であるため、そうでない場合は行き詰まるケースも多い。Cさん(日本人)は、アメリカ人とパートナーシップを組んだが、事業費の捻出から顧客開拓まですべてCさんがやった。しかし、パートナーは、利益の半分を要求したため、不公平ということでパートナーシップを解消した。これは日本人起業家がアメリカ人とパートナーシップを組む際によくある失敗例だ。
最後に株式会社には、つぎのような特徴がある。個人の集合体としての会社の名において訴訟における原告にも被告にもなる。取締役会に管理権限を集中できる。会社持ち分(株式)の譲渡が可能となる。株主は出資額を限度とする有限責任しか負わないなどだ。
■株式会社はデラウェア州が有利
アメリカでは、ある州で会社の設立のみ行い、事業活動は他の州で行うことが認められている。例えば、デラウェア州に会社を設立すると、会社の組織変更が容易にできる、取締役会の権限・裁量が大幅に認められている、敵対的買収に対抗できるなど有利な点が多い。
D社はデラウェア州に会社を設立し、本社をシリコンバレーに置く。日常業務をアメリカ人副社長に任せ、日本にいながら経営の舵を取る同社のE社長は、取締役会も電話会議で行い、会社運営にはまったく支障がないと言い切る。
現地に法人を設ける場合のメリットは、現地法人は日本の会社と別法人になるため法的責任を分けることができる、現地法人の利益は日本の関連会社に配当しない限り日本での課税が避けられるなどだ。デメリットには、現地法人の損失を日本の関連会社で吸収することによる節税効果を得られない、日本の関連会社への配当に対し10%の源泉徴収税を支払う義務が生じる、米国法人の子会社がアメリカ以外にある場合、子会社の収入が課税対象になるなどがある。
株式会社の設立手続きは、各州とも基本的にはほぼ同じだ。会社は、発起人が設立定款を作成し、これを州務長官に届け出、州務当局が受理したときに設立されたことになる。このとき、一定の登記手数料を支払う。日本と違い、株式の引き受けや払い込みは、必要ない。設立定款には、会社名、会社存続期間、会社の目的などを記載、最低資本金は通常1000ドルで最低取締役数は一人などとなっている。
次回は、事業を成功させるための米国式ビジネスプランのつくり方と資金調達法を研究する。
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