実践講座 アメリカで会社を起こす!
アメリカで成功できる起業家とは
■“アメリカ社会への貢献”その気構えが成功に導く
今回は、年齢、性別、業種を問わずに共通する「アメリカで成功できる起業家」の条件を起業コンサルタントの観点から紹介する。
前回の「起業前にやるべきこと」で述べたとおり、「アメリカ人の価値観やアメリカ社会のルールをよく理解」し、「英語によるコミュニケーション力」と「専門能力」に磨きをかけ、「生活費を含め最低一年分の資金を用意」することは、成功のための大前提となる。また、「起業する地域の土地勘、人脈、情報を持つパートナー」を得て、「アメリカ式経営、特に人事管理システムをよく理解する」ことも欠かせない。
それらの準備を完了したうえで、さらに私が必要と考える、いわば気構えというべきものを八つに整理して、お話ししてみたい。
まず第一に、事業を通じてアメリカ社会に貢献したいと本気で思い、行動すること。多くの日本企業が1970〜80年代にアメリカに進出した。表面的にはアメリカ人やアメリカ社会に貢献するというポーズをとりながら、実際には利益や市場シェアの獲得を最優先に行動したために「ジャパン・バッシング」運動が全米のいたるところで起こった。
うそはつけないもので、いくら素晴らしいことを目で訴えたところで、行動に自然に現れなければ、すぐにばれてしまう。建前と本音が違えば、信頼をされないばかりでなく、うそつきとしてアメリカ社会から爪弾きにされ、ついに撤退を迫られることになる。アメリカ社会に貢献する気のない起業家は、アメリカに進出しないよう忠告しておく。
第二に、事業における健全な競争心を持ち、公平な実力主義に徹することができること。アメリカは日本と違い、徹底した「業績主義」「実力主義」を貫いている。そのアメリカで起業するからには、日本的な「温情主義」や「横並び主義」を排し、「業績主義」や「実力主義」を実践することは必須だ。
第三に、融通性を持ち、(仕事、家庭、勉強、交友、趣味、地域活動、健康管理、スポーツなどに対する)バランス感覚を保つ。いろいろなことに積極的に取り組める人は、性格的にもバランスが取れ、人格も高い。また、そうすることで、アメリカで通用する起業家としての「総合力」が養われる。
これら諸活動で得た知識、知恵、経験、感性、集中力、持続力、創造力、指導力、意志決定能力、柔軟性、協調性、人脈などが、いざというときに結集されて「総合力」をなし、相乗効果が出る。アメリカ人はそういう総合力のある起業家に魅力を感じ、ついていく。
第四に、素直に誰に対しても誠実かつ平等に接することができることが重要だ。日本では、今でも年齢、性別、出身校、家柄、会社、役職、地位、出身国、人種、お金の有無などで、無意識のうちに差別している人は少なくないのではないか、しかし、アメリカでは、差別をしたという印象を与えただけでも、法的に訴えられたり、人種・人権保護団体から圧力がかかり、事業に大きく影響する。
経営者自身と会社を守る観点からも、誰とでも誠実かつ平等に接することができることは、アメリカで起業する人の最低条件といってもいいすぎではない。
第五に、強力なリーダシップを発揮できること。アメリカ人は、会社すなわち組織において、強いリーダーシップを望んでいる。ただでさえ、自己主張が強く、個人プレーを大事にするアメリカ人なので、強いリーダーシップがないと、社員全員が同じ方向に向かって力を合わせることは難しい。また、強いリーダーシップが発揮できない経営者には、アメリカ人はついてこないことを肝に銘じて欲しい。
■人脈を作り、ビジネスに活用
第六は、交渉力と説得力があること。アメリカで大成功した起業家には共通の強みがある。それは、抜群の交渉力と説得力の持ち主であることだ。
起業をしたときは、お金、人材、会社の知名度、会社の実績など何もないので、取引や資金調達で有利な条件を引き出すための説得材料がまったくない。しかし、成功した起業家は信じられないくらい有利な条件を得ている。日本ではあまりないことだが、「すべて交渉次第」の国、アメリカでは、交渉力や説得力に長けていれば、相手がたとえ大企業でも、自分達に有利な条件で取引できるのだ。ただし、ある程度以上の英語力がないと話にならないのは、前回をいったとおりだ。
第七に。積極的だが自然に、アメリカで人脈を築くことができる行動派であること。アメリカでの人的ネットワークは、会社や組織ベースではなく、完全に個人ベースでできている。したがって、ふだんから個人のネットワークを広げ、ビジネスに大切な人脈を作る努力ができる経営者とそうでない経営者の間には、五年、十年後に事業規模において大きな差が出てくる。
日本でも、ビジネスをするうえで人脈を重視することには変わりはないが、その人脈をすぐにビジネスに利用することは無作法とされている。アメリカの場合、その点は単刀直入で、ビジネスに生きる人は、ビジネスに生かすために人脈を広げていることを言動に表している。また、紹介者を通じて初めて会ったアメリカ人から、いきなり商売の話を持ちかけられることは日常茶飯事だ。日本なら、すぐに対応するのは避けて、紹介者の手前、適当な返事でごまかすことが多い。しかし、アメリカ人は真剣で、ダメならダメでその旨を遠慮なく伝え、興味があればすぐに商談へと発展させていく。
最後に、アメリカ式コミュニケーション法、つまり積極的かつオープンなコミュニケーションをアメリカ人とできることが大切だ。「英語力のあること」が前提だが、英語力とコミュニケーション能力とは別問題だ。なぜなら、英語はあくまで手段で、ここでいうアメリカ式コミュニケーションとは、アメリカ人から信頼と支援を得るために必要な言動を含めたコミュニケーション技術を指すからだ。
昔から自分からよくしゃべることは、「恥」として教育を受けてきた我々日本人にとって不得意なことであるが、アメリカで経営者として生き延びるためには、遠慮なく堂々と自分から言動を起こしていってほしい。そうすれば、日本人どうしでは軽蔑される言動であったとしても、アメリカ人は信用できるリーダーとみなして、心を開いてついてきてくれる。
次回は、起業成功のカギとなる専門家、パートナーの選び方、使い方について述べてみたい。
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