実践講座 アメリカで会社を起こす!
アメリカで起業するメリット・デメリット
■メリット、デメリットをまず頭に叩き込む
最近、アメリカで起業する日本人、特に若者が増えている。
数、質、スケールのどれをとっても世界で類のない「起業家王国」で起業するのは、実にエキサイティングだ。 私は、仕事柄、月の半分をアメリカで過ごしており、無限の夢を追う目の輝いた若い日本人起業家によく出会う。私自身も六年前にアメリカで経営コンサルティング会社を起こした若輩起業家の一人だ。
一方、起業の夢と希望を持ってアメリカに渡ってきたものの、文化、国民性、商習慣、価値観、言語などの違いから来る厚い壁に阻まれ、あっけなく挫折し、日本にも帰れなくなった日本人もまた、数多くいる。マスコミが紹介する「アメリカ起業物語」は、成功例が多いため、「行けば何とかなる」と思って来る風潮も目立つ。
そこで、私自身の実体験を通して、また起業コンサルタントとして現場で思い知らされた教訓を、これからアメリカで起業することを夢見ている読者のために語っていきたい。
アメリカで起業する場合、当然メリット、デメリットがある。
それらを知らずして渡米すると、十中八九失敗する。私の場合は、起業前にアメリカの会計事務所で新事業の立ち上げ、M&A(企業の合併・買収)、戦略的企業提携のコンサルティング業務を行っていた。そこで起業のメリット、デメリットを頭に叩き込まれたおかげで、基本的な失敗は避けられたと思う。まず日本で起業するのと比較して、主なメリットを考えてみたい。
- 会社設立にさほどお金がかからない。(必要な資本金は1000ドル程度)
- 一部の大都市を除いて、生活費並びに会社管理費が安いため、資金が少なくてすむ。
- アメリカ人は、ハイリスク・ハイリターン志向であるため、ビジネスプラン(事業計画書)と起業家本人がしっかりしていれば、知人、エンジェル、ベンチャーキャピタルなど外部からの資金調達が比較的容易にできる。
- 夢(=アメリカ人の場合、将来の高収入と自己実現の可能性)を与えられれば、起業時から優秀な人材(但し、ホワイトカラーに限る)が確保できうる。
- (例外もあるが)世間体を気にしないで、アパートや自宅のガレージなど、どこでも起業ができ、安上がりで効率がいい。
- SOHOに対する支援体制、環境(「オフィス・デポ」などの大型専門店やビジネス・コンビニ)が整っているので、必要な家具・備品・事務機器などが安く早く調達、利用できる。
- 年齢や性別より実力を重視する国なので、成果を出しさえすれば、高い評価を得て、支援者・顧客が得やすい。
- 先輩起業家や専門家(起業専門の弁護士、会計士、コンサルタントなど)が多いため、支援者やアドバイザー(メンター)が探しやすく、強力かつ高度な支援が得られる可能性が高い。
- アメリカでは、業界、分野、技術によって、特定の地域に特定産業の企業・研究機関・専門家が集まっているため(ダラスの場合は情報通信、流通、外食産業など)、その地域で起業すれば、業界の最新技術・情報・人材・顧客が得やすく、経営効率上、当初から優位に展開できる。
- ほとんどの分野で世界最大のアメリカ市場を狙えば、ビジネス(プラン)が魅力的になり、支援者を得やすい。
- 過去の実績がなくても、コミュニケーション力(説得力、交渉力、プレゼンテーション力)があれば、支援者が得やすい。
- エンジェルやベンチャーキャピタルに出資してもらえれば、経営面で支援が得られる。
- 上場・店頭公開が比較的早く安く、容易に(赤字でも)できる。
■「謙虚」は評価されない。
一方、次のようなデメリットもあることを、肝に銘じておいてほしい。
- 現在のアメリカの移民法では、一億円近くを事業に投資して得る「投資家ビザ」を除き、起業家には労働ビザが与えられないので、オーナーとしてアメリカで会社経営することはできない。(対策として、アメリカ人を一時的にオーナーにして起こした会社を通して、永住権を提供してもらう方法が有るが、往々にしてそのアメリカ人に会社を乗っ取られることがあるので要注意)。現実的には三ヶ月までの滞在は、ビザ無しで可能なので、日本に居住したまま時々アメリカに行くとか、(私のように)現地で就職して永住権を取得してから起業するなどの方法を取っているケースも多い。
- 日本人の場合、英語力不足やアメリカでのビジネス常識についての認識不足やアメリカでのビジネス・ブローカーなどにだまされたり、利用され、経済的、時間的、精神的損害を被ることが多い。
- 文化、国民性、商習慣、価値観、言語などの違いにより、精神的、肉体的ストレスや孤独感に悩まされる。
- 図々しく自分や会社を売り込むことが評価されるアメリカでは、謙虚で遠慮がちな日本人は、最初(起業時)から評価されにくい。
- アメリカは「訴訟王国」であるため、セクハラ、人種・男女・年齢差別、プロダクト・ライアビリティ(PL)などの様々な予期せぬ問題で訴えられやすい。
- 国土が広いので、市場が地域ごとに形成されており、最初から全米を狙ってはビジネスが成り立たない。
- 各州が国といえるくらい独立しており、法律や税制が違うため、起業する州を容易に決められない上、複数の州にまたがって起業する場合、対応が面倒になる。
- 地域中心型経済で日本ほど国際的な情報が入らないので、業種によっては不利になる。
- 生活面で慣れるのに時間と下間がかかるため、起業して軌道に乗るのも遅れる。
- アメリカ人(特にブルーワーカー)は、人によって労働力の質がかなり違うため、日本のように平均的人材を確保するのが難しい。
- 価値観の違うアメリカ人を管理するのは、難問中の難問であり、アメリカ人を雇った場合、すぐ辞められることもよくある。
私は、アメリカで起業することを否定しているわけではない。むしろ、日本人とくに若者はどんどんアメリカに渡って起業家としての道に挑戦してもらいたい。但し、起業前にやるべきことをしっかりやってほしいのだ。そうでないと、最初から致命的な失敗をする可能性が極めて高いからだ。そこで、次回は渡米する前にやるべきことについて、お話ししたい。
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