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米国調査・研究視察報告
ビジネスの成功は「スピードと戦略・戦術」
利益をあげ,存続させることが企業の使命
ビジネスは、徹底して戦略的であるべき
藤澤: ところで、ビジネスに対する日米の考え方の違いには改めて驚きました。全体として、日本企業は利益に対する執着が米国企業に比べて浅薄だと感じています。以前からその傾向はあったものの、米国企業の利益に対する執着の強さを実感しました。米国経済の見せる現在の強さは、根底に“利益への執着”があるからでしょうか。
浜口: バブルの全盛期、日本では「米国から学ぶものはなくなった」という考えが浸透しました。当時、ソニーの故盛田名誉会長にお話を伺う機会があったのですが、「それは非常に危険な考え方だ」と指摘されていました。「米国の科学的経営や合理性は経営の基本。長期的な視野に立って経営を行うことも重要だが、企業の最終的な目的は利益を産み出すことであり、それがなければ存続は不可能だ。その点で最も大事なのは人間である」という話を思い出します。
日本と米国では、文化や慣習、ビジネスに至るまで異なる部分が非常に多い。だからこそ、訪れる度に学ぶべきことが必ず出てきます。今回の視察でも、学ぶべき点は多くあったのではないでしょうか。
國本: 戦略・戦術面でのヒントも数多く得たと思います。Yahoo!社をはじめ、米国企業の戦略性の高さ、米国の経営の現状を目の当たりにすると、日本企業の打ち出す戦略は中途半端であることを痛感させられました。米国の現実を見るにつけ、話を聞くにつけ、もっとこうすべきだ、と駆り立てられるような思いが湧いてきました。「ビジネスとは徹底して戦略的であるべき」という事実に気づいただけでも大きな成果を得たといえるでしょう。
浜口:私も17年間米国にいますが、こちらでは何かを発表する場面で必ず真っ先に間われるのが、「その戦略は何か」「その戦術は何か」という2点です。最初はその質間に私も戸惑いを感じたものでした。米国の文化は非常に合理的です。何かを行う際、その裏にはどのような理由があるのか、本当にそれが最良の方法なのかということを、明確に示すことが大切なのです。
藤澤:その点で、日本を代表するべンチャー・キヤピタリスト増田茂氏と、31才の若き実業家・板越ジョージ氏(詳細インタビューは、本誌次号掲載予定)にお会いし、米国での活躍ぶりを聞けたことは大きな収穫だったと思います。
渡邉: 板越氏は米国で起業し、人間関係重視の戦略を前面に打ち出してビジネス展開を行っていますが、「インターネットを介して簡単に人とコミュニケートできる時代とはいえ、そのつながりは蜘蛛の糸のように細い。だからこそ“人と人との信頼”が大切」と語る言葉には、オルフェスト社の戦略と相通じるものが感じられ、非常に感銘を受けました。
國本: お2人ともビジネスに完全燃焼しているという印象を受けましたね。その様子を垣間見ただけでも、日本で私ももっと一所懸命やらなければ、いや、ぜひ一所懸命やりたい、という強い気持ちを抱きました。
浜口:今回出会ったお二人は米国を拠点としてビジネスに携わっていますが、しっかりした目的を持ち、自分の力量を見極めて、己れの長所・短所をつかみ、その中で自分は何ができるかを考え、戦略を立て、戦術を使い、目的に向かい進んでいく。日本ではなかなか出会うことができない人たちです。日本では長いものに巻かれろ的な風潮があり、はっきりした目標・戦略が立てにくいため、そのまま済ましている部分も多い。現在、日本経済が混乱しているからこそ、戦略をきっちりと立て、実行に移した会社が、勝ち組として残っていくのではないでしょうか。
岡田:板越氏の話では、ビジネスプランをしっかり持っている人間が投資を受けられ、彼に出資する人は彼を信用し、彼のビジネスに出資したいのだと、目の覚めるお話を聞きました。米国だけでなく、おそらく世界中のどこでも、個人が信用されるような人間にならなければ大きくはなれないのだな、と経営者としてつくづく実感しましたね。
渡辺: べンチャー・キャピタリストの増田茂氏の話も大きな収穫だったと思います。増田氏が「システム基盤の核となる技術への投資を先行させている」と語っていることに感心しました。また「逆に企業の動きを見据えながら戦略を決める」という話でも、その成否はともかく、現実に起業家のアイディアをべンチャー・キャピタルやプロデューサー等が起ち上がりの段階までうまく持っていく仕組みが米国に存在することを実感しました。米国の"懐の深さ"を感じたといってもよいでしょう。
浜口: 会社は起業する際、基本の事業計画や人間性を前面に出してアピールしますが、そこにべンチャー・キャピタリストや証券会社等ののプ口の投資家が参加してくると、当初の計画を押し進めつつも会社が順調に成長していることをアピールする必要があります。今回の視察でお気づきの通り、かなり大きな展望の下で訪問企業側の話が展間されたことは言うまでもありません。中には抽象的な話も見られましたが、過去にどうだったかよりも、将来はこうするのだという前向きな話をベンチャー企業はせざる得ないのです。
俗に「ベンチャー・マネー」と言いますが、資金を有効活用したいという考えから、ベンチャー企業はまず積極的に利益を出すことを志しますが、そこには大きな矛盾があります。インターネット関連の会社の内情を見ると、利益を出している会社は全体の10%にも満たない。そういう意味では、米国の情報系ベンチャーは、現在矛盾の真っ只中にいるといっても過言ではありません。
國本: 増田氏によると、来年(2000年)後半にはそうした矛盾が明確になってくるのではないかとのことでしたね。
浜口: ええ、これまで「インターネットという言葉を使えば儲かる、将来につながる」といった風潮がありましたが、それが真実か否かの審判が下るでしよう。
米国では株式公開がスタートライン
岡田: 米国の会社は「借入金」を資金にするのではなく、「出資」してもらう、つまり株式を渡す形態になっていて、社員の多くも自社株を持っている。日本でも同様の形が出てきましたが、まだまだ一部の株主が会社を支配しているのが現状です。米国において株式を公開すること、あるいはしないことのメリット及びデメリットにはどんなものがあるのでしようか。
浜口: 株式を公開する企業のメリットは幾つかあります。まず、公開することで大量の資金調達ができ、しかも直接金融なので、返済しなくてもよい。間接金融で融資を受けることに比べて非常に有利だと思います。
米国における株式公開に関する考え方は、日本とは異なっています。日本では、20数年運営してきた会社がある程度の規模になったので、社会的地位確立の意味からも、そろそろ公開しようかというケースが多い。しかし米国では、公開して初めて会社としてのスタートラインに立つ場合が多いのです。そのため、起業して短期間で公開するのは難しいことではありませんが、一旦公開してしまうと、公開企業として経営を続けていくことが非常に難しいのです。
藤澤: なるほど、まるで日米の大学入学・卒業の違いに似ていますね。
浜口: 公開企業として更に成長していくことは、社会的信用を高め、認知度を高めることにつながります。米国に進出した日系企業と、米国企業の間に見られる現実の差として、公開しているか否かで、従業員のモラルが違ってきます。我が社は社会に認知された公開企業だという認識の有無は、従業員のモラルに著しい差を生み出します。
國本: 確かに社員の覇気は大きく違ってくるでしょうね。
浜口: 一方のデメリットですが、公開はディスクロージャーを意味します。米国では個人投資家の意志決定を重んじ、徹底したディスクロージャーを要求されます。その上、公開後の株価変動に対する責任も重くのしかかってくる。業績が良くても、必ずしも株価に反映するとは限らず、風評が影響することもあります。しかも、株価の動きは毎日厳しくチェックされ、株価変動が原因で訴訟対象にもなり得ます。
小田: 投資家の資産を不安定な状態に置いた責任を間われるのでしようか。
浜口: そうです。現実に、ある程度の業績を出していても、株価の急落で社長・取締役会が訴えられたケースはいくつもあります。公開企業が訴訟対象であることは、しっかり頭に入れておかなければなりません。市場自由化を迎える日本は、これを彼岸の火事とせず、IR
(投資家対策)をしっかり行っていかなければなりません。
もう1つのデメリットは、敵対企業の買収ターゲットになりやすいこと。気付いたら、大多数の株式をライバルグループが握っていたという笑えない話はよく聞きます。日本でも話題になった有名な乗っ取り屋ピッキン氏が、自身が経営していた石油会社を、彼と全く同じ手法で他会社に乗っ取られたことがありました。
岡田: トヨタ自動車の子会社である小糸製作所を買収しようとした人ですね。
浜口: ええ、彼は自社株を過半数買収された時点で、買収先から「あなたはこの会社にとって重要な人だ」と言われ、社内の地位は安泰と楽観していたところ、半年後にあっさりと首を切られてしまいました。
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