|
米国調査・研究視察(1999年10月16日〜24日開催)報告
ビジネスの成功は「スピードと戦略・戦術」
<出席者>(順不同・敬称略)
コーディネーター(国際ビジネスコンサルタント)浜口直太
視察団団長(JCFA広報委員長) 岡田康雄
視察団実行委員長(JCFA経営研究委員長) 藤澤 勝
(株)ワールド社長 國本光徳
アコム(株)経営企画部 担当長 渡邉芳樹
プロミス(株)営業システム部長 渡辺光哲
(株)レイク大阪営業部 執行役員・大阪営業部長 小田忠明
<訪問先>
【ニューヨーク】
ITASHOグループ代表取締役 板越ジョージ氏との懇談会(べンチャー)
L.J.オルフェスト社(ファイナンシャル・プランナー事務所)
ニューヨーク・ファイナンス・コム(モーゲージローン会社)
ニューヨーク・ニューメディア協会(NYのニューメディア産業を支援する会社)
アメリカン・マネジメント・アソシエーション(権威ある国際研修機関)
ゼロン・グループ代表取締役 増田茂氏(べンチャー・キャピタリスト)との懇談会
【サンノゼ】
Yahoo!社(インターネット検索サービス会社)
アエロファンド・ファイナンシャル(売掛債権買取会社)
【サンフランシスコ】
フェアー・アイザック社(マーケティング・コンサルティング会社)
イーローン社(オンライン・モーゲージ&自動車ローン会社)
インターネットは全米におけるニュービジネスの大波
浜口: 米国の金融関連ニュービジネスに関するベンチャー企業を訪問・視察した今回の視察では、インターネットを中心としたニュービジネスがまさに全米を席巻している現状を肌身で感じ取っていただけたと思います。
訪問先は店頭公開予備軍6社と上場2社でしたが、特にインターネット企業の先駆けとして急成長したYahoo!社の訪問が実現したことは、非常にタイムリーで興味深かったのではないでしようか。
藤澤: ええ、インターネットを駆使したニュービジネスは、私の想像よりもはるかに進んでいて、実は少なからぬ、ショックを受けています。どの会社も大変進んでいるという驚きに似た感想を持った、というのが率直な意見です。
小田: やはりYahoo!社のシステムは驚愕に値するものでしたね。私自身も毎日インターネットを利用しているため、そのシステムを理解したいと興味津々だったので、是非訪れたい企業の1つでした。
浜口:Yahoo!社への企業訪問の申込は世界中から殺到しており、なかなかアポイントを取り付けられないのが現状です。今回皆さんは非常にラッキーでしたね(笑)。
小田:「Yahoo!」といえばインターネットに1度でも触れた人なら知っているように、いわゆる世界初の「サーチエンジン(=検索サービス)」をネット上で開始した会社ですね。つまり、「どこに何があるか」を目的別に教えてくれるネット上の水先案内人というか。
浜口: Yahoo!社が現時点で利益を上げているのは、しっかりとした戦略を立て、それを着実に実行してきた背景があるからです。同社は、インターネットの世界ではパイオニア的な存在ではありますが、それをブームとしてとらえているわけではなく、インターネットを基本のビジネスとして、利益性・収益性を長期的な展望に照らし合わせながら、段階的に戦略を変えて実行しているわけです。例えば日本進出の際、同社には日本につてがなく、人材・資金的にも厳しいため、ソフトバンクと組みました。その時点では、それがべストの日本進出方法だったということを今回の訪問で知ることができました。テキサス・インスツルメンツがソニーと組み、今では単独で展開しているように、Yahoo!社も今後は単独で世界戦略を図っていく方針であることからも、堅実なビジネス展開は変えないようです。これは、派手なインターネット業界においては、地に足のついた戦略といえます。
渡辺: 応対にあたったスタッフのいずれもがしっかりした考えを持っており、人間的にも魅力に溢れていましたね。従業員の意識の高さも、企業を支える大きな力の1つだと思います。
岡田: その内情を見るにつけ、現在の米国でインターネットなしのビジネスは考えられず、日本でもいずれそうなることを思い知らされました。その中で、小規模業者はそれをいかに導入し、どう活用すればよいのか。そうした新たな悩みが生じましたが、同時に帰国したら何から着手しようかという、別の新たな刺激を強く受けました。
浜口: 私もこれまで数々の企業を訪問し、その度に新たな発見をしてきましたが、今回の視察ではインターネットの驚異的な発達ぶりに驚かされました。インターネット導入によって、3年もしくは1年という短期間で劇的に変身を遂げている。この事実から「学ぶこと」、即ち時に応じて戦略を変えていくことの大切さを痛感しました。
渡辺: しかし、具体的な導入となるとまだ難しいといわざるを得ませんね。日本はまだインターネットが端緒についたばかりで、米国に比べて遅れは明らかです。私はむしろ、システムを追随するよりも、そうした新しいものを取り入れる感覚を学ぶべきではないかと思います。それは専業界だけにとどまらず、日本のあらゆる企業に求められる姿勢ではないでしょうか。
浜口: 確かに、「インターネットを導入し、いち早くビジネス化させることが成功へのカギ」という捉え方しかできない部分が日本にはあります。しかし、インターネットで一体何ができるのか。導入すれば、どのようなプラス要因があるのか。それを充分検討してからでないと、ブームの中でただ空回りしているだけになる恐れがある。米国でもインターネットで利益をあげている会社はごく一部なのですから、米国の結果をよく観察した後に、戦略化しても遅くはないかもしれません。
現在の状況は、世界にテレビが導入された時代を思い起こさせます。各社一斉にテレビ生産に着手したように、インターネット関連企業も、雨後の筍のように勢いよく出現しています。
しかし、Yahoo1社のようにある程度体制が確立された会社では、今期から決算が黒字に転じていますが、インターネット関連の会社で黒字企業は決して多くありません。テレビ製造で生き残ったのが数社のみだったように、堅実に利益を作り出す企業を筆頭として、今後生き残っていく本物を見極めることが重要です。
他方で、インターネットは確実に「技術」として確立されつつあるのも事実です。世界はまさにその流れの中にあり、乗り遅れないようタイミングを測ることも重要ですね。
インターネット時代だからこそ人と人との信頼関係が原点
渡邉: 私は、最初の訪問先「L.J.オルフェスト社が印象に残りました。欧米には古くからプライベート・バンクが存在しましたが、同社が営んでいるのは、まさにプライベート・バンキング業務そのものではないかと思いました。
浜口: プライベート・バンキングとは金融機関が資産家の財産を総合管理し、税務や資産管理運用などについての情報を提供したり、関連業務を代行するシステムですね。
渡邉: ええ、現在の投資顧問会社は、プライベート・バンキングが発達した形ですね。その昔、投資顧問を受けられる人々は限られていましたが、広く一般大衆に投資信託商品が出回り、大衆向けの資産運用手法が拡がると、人々はまた自分だけの投資顧問を持ちたいと望むようになってくる。その結果、プライベート・バンキングに戻ったのが、このオルフェスト社のようなファイナンシヤル・プランナー事務所ではないかと感じました。
ここでの業務を見ていると、情報や伝達技術が発達するほど、人と人との信頼関係を築く努力が必要になり、"フェイス・トゥ・フェイス"のコミュニケーションがいかに大切であるかを再認識できます。
浜口: まさに消費者ニーズがサービスを生む典型例といえますね。
ビジネスとは本当に面白いもので、技術や方法は時代と共に変化しますが、その基本は実は何も変わっていないのではないかと感じることがよくあります。私自身ダラスに事務所を構え、コンサルティングの仕事に就いているため、どんな企業が米国で成功するのかを常に研究しています。が、研究すればするほど、これは昔の口ックフェラーではないか、かつてのカーネギーではないか、という印象の会社によく出会います。
岡田: 同社では最先端のインターネットの話題はあまり出されませんでしたね。それどころか、“手作りの仕事"を強調していました。さらに顧客から公明正大に手数料を徴収し、その手数料は運用の資金額で決定している、といった一点の曇りもないクリアな運営方法に、大変興味を持ちました。
浜口: 「企業の大前提は利益を出すこと」という考え方は米国では当然で、利益を出さない企業は悪である、と言い切っても決して過言ではありません。バブル崩壊直後の日本企業を見れば自明の理で、好調時にいくら市場拡大しようが、破綻時にはどれだけの犠牲者を出すことか。"利益を上げる"の意で「ボトム・ライン」という英語を使うのは、それが企業にとって絶対必要な最低条件でもあるからなのです。運営方法を明らかにするのは、至上命題といえるでしよう。
岡田: それなのに利益至上主義に走らず、170人の顧客を担当するスタッフ12人は、お客さま1人ひとりのことをきちんと記憶されていることも印象的でした。監査も2〜3年に一度受け、業者数は全米で3万3000社程度だというあたりも、業界として日本の消費者金融と酷似しているような気がしますね。
浜口: お2人の言う通り、企業にとって最も大切なのは何をおいても“人間”です。トップが優秀な人間をいかに動かすことができるか。いかに同じべクトルで目標に向かって誘導できるか。時代が流れ、マルチメディア中心の世の中になろうと、「最初に人間ありき」は不変の真実といえるでしょう。
渡邉: つまり米国のファイナンシャル・プランナーがプライベート・バンキングに回帰しているのは、人間関係を大事にするビジネスの原点に立ち戻ったというわけですね。
浜口: ええ、米国経済は好調なのに、敢えて「人間主義」に回帰しようとする姿勢には感慨深いものがあります。米国経済が不調だった頃、日本はバブルの絶頂期でした。米国の会社を訪問しても、業績の悪い会社は明らかに人間関係の配慮を欠いていました。利益追求に徹するあまり、人へのサービスを忘れてしまっていたのです。
そうして80年代後半に日本に叩きのめされた米国企業は深く反省し、日本的経営を徹底して学びました。日米両国の長所をうまく融合させた会社が、米国では今急成長しているのです。投機的な一部の会社は例外として、利益を出すことを大前提に、顧客を大切にすることを忘れず、時代の流れに乗り、インターネットなど新技術を導入・駆使していくこと、それが今後の課題になっていくのではないでしょうか
|